15:32

 

 出かけますからね 

 

奥様のお声が聞こえます。

いつもの事ですので、返事はなし。

ニコニコ顔の奥様が、お出掛けです。

近所の、サークル仲間共々、社交ダンス教室にお出掛けです。

縁側が見える離れの部屋で、朝からほろ酔い気分の旦那様。

今日も、夜が明けやらぬうちから酒を呑んでいます。

気分は最高。

喉元は、潤っています。これが、生きる源の証しです。

奥様べったりの猫が、いそいそと旦那様の所へやって来ます。

奥様が出掛けられたので、仕方なく、こちらへ。

でも、良き相棒なのです。

話し相手が無口なのが良い。

話す内容は、旦那様がいっぽうてきに話すだけ。

聞き役も、聞いていないのが現実。

それでも、しきりに旦那様はお喋りをつづけます。

 

幸福とは、如何にアルベキか!

別に難しいことじゃないところが、良い。

旦那様の幸福は、勿論、純米大吟醸で、素晴らしい、喉越しのある酒があれば幸せ。

そして、老人は先が短い故、欲がない。

欲を言わないが、強いて、言わせてもらえれば。

美味しい酒の肴があれば、とびっきりの幸せだ!!

更に、その酒の肴には明太子の焼いたのがあれば、更に良い。

もう一つ。

いや、もうこの辺でいいでしょう。

老人は、欲を言わないのが良い。

 

話し相手が、わが家の猫様。

 “ ニャ~、ニャ~ 

 ふむ、 ふむ 

人語と猫語が飛び交います。

おもしろい光景なのですが、そこは旦那様の身勝手な、独断的な会話が長々と、延々と。

我が家の猫も、疲れ(-_-)/~~~ピシー!ピシー!

老人と猫の談義?が長々と続きます。

旦那様の幸福論も終盤をむかえる頃には、既に、出来上がっています。

ホンワカ、上機嫌。

 

心の酔いは素敵な気分で、我が家の猫に、キスを!

 

ギャー

 

 

 

我家の猫も、時には、自己主張するのです。